設計にあたり
古くから小山市乙女の河岸にある旧家の建替えの長期計画である。既に旧来の家屋の姿はないものの敷地のおもむきは伝統を物語っている。また長閑な田園地域に位置し敷地の宅盤は地域全体より一段高く、そこから望む遠くは富士山、近くは田園環境が四季折々の大地を彩る。宅内は母屋、書斎棟、車庫棟からなり、数年前に書斎棟、車庫棟(本HP掲載)を建て替え、続いていよいよ母屋の建て替えである。
計画においては、豊かな周辺の自然環境と共に暮す環境づくりを計画のテーマとして、住宅の各所に内外環境が多様な関係を生む(からむ)住空間づくりに努めた。建物の外観はおおらかな切妻の重層屋根の構成とし環境のなかで端整に佇んでいる。屋内においては玄関続きにある大きなピクチャーウインドウを有するホームギャラリーが来客者を歓迎し、また「真」づくりの丁寧に設えた和室は縁側から望む庭景観と共に落ち着きあるひと時を与えてくれる。日常の生活空間となるリビング・ダイニングからは開け放てる建具の先に長年手を掛けた庭につながり内外が一体空間となる。などなど移り変わる自然環境と多彩に「からむ」住空間が奥行感のある生活を育み心地よい居場所となり、末永く愛される家が誕生した。